第103章

藤原お爺様はまだ、森野堂が裏でしてきた汚い所業を知らない。もし知れば、森野家を滅ぼしかねないだろう。

ましてや森野堂は、岩崎奈緒に手を出そうとした過去まであるのだ。

森野昇の額にじわじわと汗が滲み始める。岩崎奈緒ははっきりとは言わないが、これが彼女からの脅しであることは彼にも分かった。

もし彼がこのまま彼女に逆らい続け、藤原光司の案件を遅らせるようなことがあれば、彼女はお爺様に、森野堂がかつて自分を辱めようとした件を告げるだろう。

そうなれば、森野家は間違いなく破滅的な災厄に見舞われる。

森野昇は岩崎奈緒がこのような切り札を持っていたとは予想だにしておらず、口を開けても、しばらくし...

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