第105章

藤原光司の胸が彼女の背中にぴったりとつき、片腕がその腰を抱いていた。

エレベーターはすでにどこかの階で停止しており、あとは救助隊員の到着を待つだけだ。

彼女を離すべきだったが、二人とも身動き一つしなかった。

岩崎奈緒は、二人の体勢がどこか淫靡な雰囲気を醸し出していることに気づいていなかった。ここには二人きりであり、こうして寄り添っている方が、かえって安心できた。それに、手すりがあるのはこちら側だけだったのだ。

彼女はむしろ、もっと後ろに下がって距離を詰めれば、さらに安心感が増すのではないかとさえ思っていた。

藤原光司の息が耳元にかかるのを感じて、ようやく二人の距離がどれほど近いかを...

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