第106章

岩崎奈緒があれこれと思いを巡らせていると、藤原光司の電話が鳴った。井上進からだった。

藤原光司が今回ここを離れたのは、本来なら海外での緊急会議に出席するためだった。しかし今、エレベーターに閉じ込められてしまっては、どうしようもない。彼は井上進に準備をさせ、自分の代わりに会議に出るよう指示するしかなかった。

井上進は彼の右腕であり、代わりに会議に出席するのは初めてではない。そのため、すぐに準備を整えた。

藤原光司は冷淡な表情を崩さず、この狭い空間に立っていても、まるで自邸の裏庭にいるかのように、慌てた様子を微塵も見せなかった。

「社長、岩崎雄大の件は伝えておきました。岩崎さんには余計な...

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