第109章

岩崎奈緒はここで一晩待ったが、我に返るとこんな詰問をされるとは思ってもみなかった。

彼女は唇をきつく噛み締め、胸の奥がずきりと痛み、酸っぱいような感覚がこみ上げてくる。反論しようとした矢先、岩崎雄大が数回咳き込むのが聞こえた。

その咳はひどく、岩崎奈緒はとっさに傍らのティッシュを取って彼に手渡した。そして、ティッシュに点々と血が付着しているのが目に入ってしまう。

岩崎雄大自身もそれに気づき、少し意外そうな顔で眉をひそめた。

しかし、彼はそれを気にも留めず、ただ激しい怒りで逆上しただけだと思い込んでいる。

「奈緒、お前が藤原光司を好いていないことは分かっている。お前がK大にいた頃、付...

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