第127章

岩崎奈緒がまだ一言も発していないというのに、道村礼子はかつてないほどの屈辱を感じていた。

やがて、まだ彼女に馴れ馴れしくしていた千堂正幸もその異変に気づき、顔を上げると岩崎奈緒の姿が目に入り、その場で気まずそうに固まった。

我に返ると、その目には一筋の怒りがよぎる。

「岩崎奈緒!」

彼は道村礼子を乱暴に突き放し、前に出ようとした。

岩崎奈緒は眉をひそめる。千堂正幸のこのわけのわからない怒りがどこから来るのか、理解できなかった。

「千堂社長」

彼女は丁重に呼びかけた。千堂正幸が以前にしたことは協力の精神に著しく反するものだったが、事を荒立てて面倒を増やすのは避けたかったのだ。

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