第128章

岩崎奈緒は今、猛烈な眠気に襲われていた。もし藤原光司がもう一分遅れていたら、壁にもたれかかったまま寝落ちしていただろう。

だからエレベーターの開閉音が聞こえた途端、彼女の目にぱっと光が灯り、顔を上げて見上げると、その態度はたちまち恭しいものに変わった。

「藤原社長」

彼女の瞳に宿ったかすかな輝きに、藤原光司は少しばかり気を良くしたのか、表情をいくらか和らげた。

彼がカードキーでドアを開けると、岩崎奈緒はその背後に続き、保温ポットをコーヒーテーブルの上に置いた。

「藤原社長、今夜のスープです」

保温ポットはピンク色で、とても精巧な作りをしているように見えた。

藤原光司は、岩崎奈緒...

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