第133章

ここ数年、自分の方から岩崎雄大にお金を無心したことは一度もなかった。一方、岩崎雄大は常に多忙で、このことを自ら思い出すことはほとんどなかった。

なにしろ、彼の傍には鈴木蘭がいて、岩崎陽菜がいて、そして岩崎直樹もいるのだ。

岩崎奈緒自身は仕事をしており、もし叔母の家の抱える一億六千万という借金が突然のしかかってこなければ、お金に困ることは全くなかった。

ただ、前回切羽詰まって岩崎雄大に頼んだお小遣いを、まさか取り返されることになるとは思ってもみなかった。

彼女は唇をわずかに引きつらせた。

「お父さん、どうかお体を大切に。私、今日はまだ用事があるので、これで失礼します」

「行け。ここ...

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