第136章

車に乗り込み、彼女は運転席に腰を下ろした。

足の傷はまだじんわりと痛むが、もうほとんど治りかけている。

二人とも口を閉ざしたままで、車内は息が詰まるようだった。

岩崎奈緒はすぐにはアクセルを踏まず、バックミラー越しに彼を一瞥した。

山暁へ向かうのか、それとも藤原グループか、あるいはホテルか。

彼女には判断がつかなかった。

「携帯です」

彼女は藤原光司の携帯を差し出した。

藤原光司はそれを受け取ると、画面に表示された二件の新着メッセージ通知を見て、眉をひそめた。

岩崎奈緒は彼がそれを開いたかどうかまでは見ていなかったが、藤原光司の機嫌がさらに悪くなったのを感じ取った。

まだ...

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