第156章

千堂正幸が再度電話をかけた時、自分がすでに着信拒否されていることに気づいた。

あの女、よくも……!

クソが。

岩崎奈緒など簡単に手懐けられると思っていたが、こんな事態になるとは。おまけに警察に弱みを握られる始末だ。

もし岩崎奈緒と示談にできず、警察が手続き通りに進めれば、間違いなく世間に晒され、会社の評判も地に落ちるだろう。

千堂正幸は腑に落ちなかった。か弱い女一人に、どうして誘拐犯二人を警察に突き出すことなどできたのか。

彼は今に至るまで、誰が岩崎奈緒を助けたのか見当もつかず、ただ彼女を軽んじたせいで自分がこれほど惨めな状況に陥ったことを恨むばかりだった。

「クソ女が!」

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