第158章

岩崎奈緒が階下に下りてくると、リビングにはちょうど誰もいなかった。先方の会社と夜七時に会う約束を電話で取り付けていたので、玄関にあったバッグを手に取ると、そのまま家を出た。テーブルの上にプレゼントが置いてあることには、全く気づかなかった。

一方、石川麻衣はまだ厨房で、岩崎奈緒のために滋養のある夕食を作るよう指示していた。彼女の体を気遣うあまり、岩崎奈緒が出て行ったことには気づかなかったのである。

山暁の屋敷にいる使用人はもともと多くない。岩崎奈緒がここで他の使用人を見かけることは滅多になく、頻繁に姿を見せる石川麻衣を除けば、他の誰かと交流することもほとんどなかった。

以前、藤原おじいさ...

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