第163章

彼は彼女から視線を逸らした。

視界の端で、彼女の指先がテーブルの上の書類を手に取り、一部一部、手際よく整理していくのが映る。

外からノックの音がし、続いて萩原彩花の声が聞こえた。

「藤原社長」

「入れ」

彼はその視界の端さえも引き戻し、意識を目の前のパソコンに集中させた。

萩原彩花は岩崎奈緒を一瞥し、口角を上げて大股で進み出た。

「さっき従姉さんから電話があって、社長へのプレゼントを買ったからって、速達で送ってきたんです。藤原社長、どうぞ」

萩原彩花は岩崎奈緒を苛立たせるため、わざとカフリンクスを開けて見せた。

「従姉さんが、気に入ったかどうか聞いてくれって。もしお気に召さ...

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