第164章

以前に彼女のために手を怪我した件は言うまでもなく、その傷跡は未だに完治していない。その後も誘拐犯のところから彼女を救い出した。

その間にも何度か、彼女はまるで疫病神のように、関わるたびにろくなことがなかったが、それらも彼は水に流してきた。

スープを届けに来るのは、当然のことではないのか?

なぜあんなに安堵しきったような顔をするのだ。

藤原光司の眼差しが冷たくなった。

岩崎奈緒は誰にも目を向けず、書類を手に取るとその場を後にした。

萩原彩花が彼女を嘲るこの機会を逃すはずもなく、慌てて後を追う。

ドアが閉まった途端、彼女の得意げな表情が露わになった。

「これで諦めがついたんじゃな...

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