第166章

岩崎奈緒は視線を戻したが、心にさざ波は立たなかった。せいぜいK市の他の人々と同じように、業界で有名なこの素敵な組み合わせを称賛したいという気持ちが湧き上がるくらいだ。

ただ、それでも藤原光司の見る目はあまり良くない、と多少思っていた。

萩原初という人物をよく知るわけではないが、その一挙手一投足には、あざとさが滲み出ている。

おまけに、自分に好意を寄せる女性を監視役として側に置いている。高嶺の花のためなら、よく耐えられるものだ。

一行は無言のまま、一階で足を止めた。

岩崎奈緒は礼儀として、彼らから一歩下がって歩いた。

藤原光司は数人の役員を従えて、外へと出ていく。

岩崎奈緒はその...

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