第169章

岩崎奈緒は林田南の隣に立つ女を一瞥した。派手な赤髪で、アイラインは太く黒く、化粧が濃すぎて素顔が窺えない。

女は彼女が鬼の形相で駆け寄ってくるのを見て、瞬時に「チェッ」と舌打ちした。

「林田南、誰よこいつ」

「あ、これは、その、俺の従妹だ」

「嘘でしょ。K市に親戚はいないって言ってたじゃない。あんたの彼女じゃないの?」

「違う違う!」

林田南が慌てて釈明しようとすると、相手は手を振り上げ、彼の顔に平手打ちを見舞い、地面に唾を吐き捨てた。

「失せな。二度とあたしに会いに来んじゃないわよ」

林田南が追いかけようとしたが、岩崎奈緒に袖を掴まれた。

「林田南!自分が既婚者だってこと...

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