第174章

藤原光司は何も言わず、スマホの画面を落とした。林田景の問いかけなど、まるで目に入っていないかのようだ。

その頃、岩崎奈緒は自分の描いた絵が藤原光司本人の手に渡ったことなど知る由もなく、道村雪が運んできた夜食を食べ終えると、もう寝ることにした。

ユキはベッドの下で眠り、時折ぴくりと耳を動かしている。

岩崎奈緒は頭の中で最近のタスクを一通り確認し、その夜はぐっすりと眠った。

翌朝早く、朝食を済ませると、施工現場へと向かった。

作業員の動きは速い。森野昇が一声かけてくれたのだろう、今回来た人々は皆、手際が非常に良かった。岩崎奈緒は今後の材料を選定し、現場のデザインに時折調整を加えるだけで...

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