第176章

林田景は少々呆然としていたが、母親が交通事故に遭ったと聞いて、じっとしていられるはずもなかった。すぐに服を着てベッドから下りようとする。

携帯はベッドの上に置かれたままで、スピーカーフォンになっており、運転手の声が流れ続けていた。

「坊ちゃん、奥様はガールフレンドの方を気遣ってあげてほしいと。彼女も怪我をされたそうで、今は警察署にいらっしゃるはずです。奥様はご自分の見舞いは無用だとおっしゃっています」

道村雪はもともと林田景に甘えたかったのだが、『彼女』という二文字を聞いて、全身が硬直した。

彼女はまだ林田おば様には会ったことがない。だから、おば様の言うガールフレンドは、間違いなく自...

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