第178章

藤原光司はここまでして、既に仁義は尽くしていた。

彼は岩崎奈緒と関わることに、どこか抵抗があった。この女と出会うと、ろくなことがないからだ。

岩崎奈緒は一人でそこに座っていたが、病気のせいか、ひどく大人しく見えた。

周りの人々は行き交っているが、誰も彼女に近づき、助けが必要かと尋ねる者はいなかった。

藤原光司は彼女をベンチに座らせると、すぐに車へ戻った。ドアを開けたとき、ふと視界の端に誰かが彼女のそばへ行くのが映った。男ではなく、女だった。

しかも、見覚えのある女だ。

「このメス豚!やっと見つけたわよ!」

女は見るからに凶悪な顔つきで、手を振り上げると岩崎奈緒を突き飛ばした。

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