第182章

岩崎奈緒の瞼がぴくりと大きく跳ね、ほとんど無意識に手を引っ込めようとした。

しかし、林田雅は手を離さず、ただ訝しげに道村雪をじっと見つめている。

道村雪の顔は真っ青で、その視線は林田景の上を彷徨い、岩崎奈緒へと移り、最後には握られた二つの手に留まった。

彼女は林田おばさんのことを知っている。昨夜、おばさんの見舞いに行こうと思い、自分の給料から相応しい贈り物まで買っていたのに、林田景からの一本の電話で追い返されたのだ。

道村雪は自分の家柄が林田景に釣り合わないことを知っていた。それでも、彼女は確かに林田景のことが好きで、それに林田景も彼女に優しかった。

だが、今のこの状況は何だ?

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