第190章

このプレジデンシャルスイートの反対側はもう誰も使っておらず、このフロアには今や二人きりだった。

頭上の照明が岩崎奈緒の肌をことさらに白く見せ、その瞳の奥まで輝かせている。ここでどれほどの時間、待っていたのだろうか。

「藤原社長、確かにお話したいことがありまして。中でお話させていただいてもよろしいでしょうか」

藤原光司は眉をひそめた。夜更けにホテルの自室の前で待ち伏せされ、その上、以前には自分の絵まで描いている。

彼は目を細めた。断るべきだ。

二人との間に距離を置きたいのだから。

岩崎奈緒は彼に断られることを案じていた。それに、この件は一朝一夕に説明できるものではない。林田おばさん...

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