第191章

彼女は声をかけたが、藤原光司がソファの縁に頭を乗せ、眠ってしまっているのが見えた。

岩崎奈緒はほっと息をついた。わざと返事をしなかったわけではないようで、よかった。そうでなければ、気まずすぎる。

彼が眠ってしまったのなら、今夜の目的は達成できそうにない。彼女は立ち上がり、帰ることにした。

しかし、彼の少し開いた襟元がふと目に入り、少し考えてから、そばにあったブランケットを手に取り、屈んで彼にかけてあげた。

だが、身を屈めたその瞬間、藤原光司の睫毛が震え、目が開かれた。

二人の距離は極めて近く、互いの呼吸が感じられるほどだった。

岩崎奈緒がこの顔を間近で見るのは初めてではないが、こ...

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