第195章

藤原光司の眉間がぴくりと引き攣り、心臓が毒虫に噛まれたかのような痛みが走った。

「何をしている?」

その声で岩崎奈緒は我に返り、状況を理解すると、慌てて謝罪した。

「申し訳ありません、ただ……」

彼女は急いで救急箱を開け、何か使えるものはないかと中を探った。

医療用のハサミを見つけてほっとすると、すぐさまそれを手に取り、服を切り開こうとした。

しかし、服は肉に癒着しており、見ているだけでも痛みが伝わってくる。

「藤原社長、少し我慢してください」

「ああ」

藤原光司は目の前のガラスから視線を外し、彼女を見ないようにして、ゆっくりと目を閉じた。

岩崎奈緒はぐっと歯を食いしばり...

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