第197章

部屋のドアが閉まる瞬間、岩崎奈緒はソファに腰を下ろした。

林田さんに振り回されたせいで、彼女も心労が溜まっていた。今また藤原光司の背中一面の傷を見てしまい、さらに衝撃を受けた。

この拙い嘘が、いつまで続くのだろうか。

常にびくびくしていなければならない。

藤原光司は部屋でしばらく残業をしていた。背中の傷のせいで横になれないため、いっそのこと徹夜で仕事をすることにした。

夜中、部屋を出ると、岩崎奈緒がソファに寄りかかり、実におとなしい様子で眠っているのが見えた。

彼は眉をひそめる。彼女との一夜はもう完全に過去のことだ。今夜を境に、二人は距離を置かなければならない。

叔母の言...

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