第201章

藤原光司はあたりを見回し、脇に用意されていた使い捨ての紙コップを取って水を入れた。

松岡和人はその男を見つめる。なんと言うか、この人物と卸売りの安っぽい紙コップとが、どうにも釣り合わないように感じられた。

彼の手は、まるでワイングラスを握り、赤ワインを嗜むためにあるかのようだ。

この空間は、自動的に二つのエリアに分断されたかのようだった。

彼が入ってきた瞬間から、他の人々や物には誰も注意を払わなくなった。

隅に立つ二人自身もそう感じており、一種の自己嫌悪に似た感覚に陥っていた。

藤原光司の動作は急ぐでもなく、緩やかでもなく、落ち着き払っていた。しかし、このような紙コップを使ったこ...

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