第202章

藤原光司の顔が、途端に険しくなった。無意識にドアを閉めようとする。

しかし、岩崎陽菜が片手を差し出し、焦ったような口調で言った。

「藤原さん、下の階にいた時、ちょうどロビーの責任者の方とお会いしたんです。お怪我をされたんですか?別に他意はないんです、ただ心配で」

彼女はとっくに藤原光司のいる階を突き止めていた。

この階にはプレジデンシャルスイートが二部屋あり、今夜、彼女は隣の部屋に泊まっていた。

彼と同じ場所に泊まり、もしかしたら同じ枕で眠っているかもしれないと思うだけで、空気が甘く感じられた。

朝、岩崎奈緒に腹を立てさせられたが、すぐに気持ちを切り替えた。

藤原光司の岩崎家に...

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