第206章

岩崎奈緒は一切の表情を顔に出さず、歩み寄るとテーブルの上の絵画を手に取り、淡々とした口調で言った。

「千堂社長から?」

千堂正幸の眉宇に得意の色が浮かぶ。彼の会社は岩崎家よりも規模が大きく、岩崎家はようやく第二ラウンドの資金調達を終えたばかり。これまで岩崎家との提携など考えたこともなかった。

千堂正幸は、岩崎家と藤原家の縁談についてはまだ知らない。その件を知るのは、藤原家と緊密な関係にある数社のみだ。

そして千堂正幸はプライドが高いため、いわゆる「旧友」とやらにこれまで一度も連絡を取ったことがなかった。

現在、警察からのプレッシャーが大きく、彼は警察内部のコネを使い、脅しの材料にす...

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