第212章

岩崎奈緒はその動画が彼に送られたことなど知る由もなく、でたらめを並べ始めた。

【ええ、隣が真夜中に内装工事をしていて。もう苦情は入れたんですけど、管理会社ではどうにもできないみたいで】

内装工事?

藤原光司は彼女が対外的には気が強いことを知っていたが、ここまでしれっと嘘がつけるとは思いもしなかった。

目を細めたが、結局それを暴くことはしなかった。

どの県に行くのかも、聞かなかった。

岩崎奈緒は彼からの返信を待っていたわけでもなく、特に失望も感じなかった。

ドアの外では相変わらず女がドアを叩く音が響き、夜中まで続いた。岩崎奈緒が断固としてドアを開ける気がないと悟ったのか、やがて悪...

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