第214章

「奈緒、車に乗りなさい。そんな所に座っていたら、みっともないだろう」

岩崎奈緒も彼とこれ以上言い争うつもりはなかった。何を言っても、馬の耳に念仏だ。

彼女は立ち上がって車に乗り込むと、岩崎雄大はここぞとばかりに謝罪した。

「昨夜のことは、私が悪かった。千堂正幸があのようなことをしていたとは、思いもしなかった」

岩崎奈緒は唇の端を引いた。「それだけですか?お父様、鈴木おばさんがあんなことを言ったことについて、私に謝罪はないのですか?」

岩崎雄大の顔に、途端に困惑の色が浮かんだ。

「鈴木おばさんは先ほど気を失ってな。医者の話では、心労が重なったそうだ。お前はもともと彼女と仲が悪い。も...

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