第218章

部屋は静まり返っていた。藤原光司がそう言った後、岩崎奈緒の心からの返事が聞こえてきた。「藤原社長、ありがとうございます」

少なくとも、自分が彼の憎むべき妻であるとは知らないうちは、彼女に高い評価を与えてくれていた。

この婚約は二人にとって不要なものであり、それぞれにどうしようもない事情があった。どちらか一方を責める必要はない。

岩崎家はこの件で利を得ているのだ。その上で、藤原光司に妻として尊重してほしいなどと、どの口が言えるだろうか。

天下の利を全て自分が独占できるわけがない。

藤原光司は何も言わず、静かに目を閉じた。

岩崎奈緒は彼が休みたがっているのを察し、口を閉ざした。

朝...

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