第222章

今回の商談には、果物も含まれているのだから。

藤原光司は薄く笑った。「見た目は悪くない。きっと甘いだろう」

「ええ、それはもう。この蜜柑はみんな大好きですから、お正月の時期が一番の売れ筋なんです」

一行は遠くへと歩き去っていく。

藤原光司の後ろについていた井上進は口を閉ざしていた。社長がこの手の果物を好まないことは分かっている。K市にいる時でさえ、口にする果物は専属の者が海外から空輸してきたものなのだから。

岩崎奈緒は吉原素素の小さなカートを押すのを手伝い、家に着こうかという頃、吉原素素はついに堪えきれなくなった。

「奈緒ちゃん、あの社長さんとお知り合いなら、さっきカートを...

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