第224章

彼の真剣な表情と、書類に目を通す様子に、岩崎奈緒は邪魔をすることもできず、沈黙のまま目的地に到着した。

吉田さんが車の外へ出て、まず藤原光司に礼を言うと、遠くの一軒の別荘を指差した。

「あそこが探している相手の家だ。我々は藤原社長を連れて下の方を回ってくるから。叔父さんから頼まれた任務はこれで完了だぞ。さあ、行きなさい」

岩崎奈緒は振り返って藤原光司に、そして吉田さんにもう一度礼を言うと、その別荘に向かって大股で歩き出した。

しかし、数歩進んだところで、藤原光司の声が聞こえた。

「もし断られたら、俺の名前を出してみろ」

岩崎奈緒は少し意外に思った。まさか、ここの社長は藤原光司と知...

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