第230章

指が触れた箇所は、その熱まで伝わってくるかのようだった。

彼の呼吸が一瞬、乱れる。

しかし岩崎奈緒はただ真剣に軟膏を塗り込み、塗り残しがないことを確かめると、包帯を手に取り、再び巻き直そうとした。

だが、この包帯を巻くという行為は、先ほどと同じように、身を乗り出さなければできない。それによって二人の距離はさらに縮まり、吐息が絡み合うほどになった。

藤原光司は顔を背け、眉をひそめた。

岩崎奈緒は彼が異性と近付くのを好まないと知っていたので、手元の作業を少し早めた。

最後の一周を巻き終え、彼女はほっと息をついた。だがその吐息が藤原光司の肌にかかり、彼は思わず手を後ろについた。

「藤...

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