第237章

岩崎奈緒はその屋敷を出た後も、全身が火で炙られているかのような感覚に襲われ、どうしようもなく気まずかった。

彼女は深く息を吸い込み、できるだけ早く冷静になろうと努めた。なにせ、林田南の件をさっさと解決しなければ、何の憂いもなくK市へは帰れない。

すでに相手の情報を調べてあった。上司の名前は山上哲也。プライベートでの素行に問題はなく、職務にも真面目に取り組んでおり、ほとんど欠点らしい欠点のない人物だ。

今回、人をやって林田南を追い詰めさせたのは、明らかに彼の行動に刺激されたからだろう。

自分の息子が二十数針も縫う大怪我を負わされたのだ。誰だって我慢できるはずがない。

岩崎奈緒は一通り...

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