第247章

廊下の向こうの部屋では、岩崎奈緒はすでに眠りに落ちており、その眉目には疲労の色が滲んでいた。

一眠りして目が覚めた時には、すでに昼の二時を回っていた。彼女は身支度を整えると、慌ただしく病院へ向かおうとした。

しかし、藤原光司の部屋の前を通りかかった時、彼もちょうど部屋のドアを開けるところだった。

その瞬間、彼女は朝エレベーターで耳にした話を思い出した。きっと、あの高嶺の花を迎えに行くのだろう。

飛行機は午後四時着ではなかったか。それなのに、二時にもう出かけるなんて。

好きな女性を前にすると、藤原光司も普通の男と同じで、待ちきれないということか。

「藤原社長」

十分に睡眠をとった...

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