第256章

彼女の頭の中は真っ白で、藤原光司がいつ立ち去ったのかさえ分からなかった。

目の前のドアが閉まり、空気中には彼の纏っていた清涼な香りがわずかに残るだけだった。

岩崎奈緒はまるで抜け殻のようで、俯くと自分の部屋着であるキャミソールワンピースが目に入った。

薄すぎて、照明の下ではほとんど透けて見える。

浮き出た点は、まるで摘み取ってくれと言わんばかりだ。

彼女はほとんど瞬間的に寝室へ駆け戻り、自分の上着を羽織ったが、体の火照りは依然として引かなかった。

岩崎奈緒は今回、本当の意味で身の置き所もないほどの気まずさを味わった。

藤原光司があのように考えるのも無理はない。一体どんな女がこん...

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