第264章

時刻は数時間前に遡る。原田正明はちょうど仕事を終え、岩崎雄大を見舞いに行こうとしていた。

岩崎雄大がここのところずっと出社していないためだ。以前、二人が電話で話した際、彼が体調を崩して何度か病院に通っていると聞いていた。

ここ数日、岩崎雄大が顔を見せないことに、やはり少し心配していた。

三年前、岩崎奈緒の一件で岩崎家と確執が生まれたものの、岩崎雄大はこの三年間、彼を会社に留め、待遇も一切変えなかった。それが原田正明にとって、心を強く支えるものとなっていた。

今、彼は岩崎雄大のオフィスへ向かおうとしていた。ついでに書類を届けるつもりだった。ここ数日、八重樫舜が岩崎雄大の代理として発言し...

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