第266章

藤原光司の手が止まり、その視線は思わず窓の外へと向けられた。道の傍らに立っていたのは、確かに岩崎奈緒だった。

岩崎奈緒は眉をひそめ、誰かと電話しているようだった。何かしらのトラブルに見舞われているのが見て取れる。

彼女の背後にあるバーには多くの人が集まり、その中には警察官の姿もちらほら見え、時折写真を撮ろうとする人々を制止していた。

バーは一本の規制線で囲まれている。

藤原光司は井上進に尋ねた。

「このバーに何かあったのか?」

井上進は彼がそれを尋ねるとは思っていなかったようで、慌てて電話をかけて調査を始めた。

一分後、電話を切ってから藤原光司に報告する。

「社長、ここで殺人...

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