第270章

藤原グループのビルに到着し、ロビーに入ると、受付を通り過ぎる際、今日の担当が道村雪であることに気づいた。

道村雪は彼女を見ると、可憐な顔を怒りで満たし、フンと鼻を鳴らした後、隣の同僚への自慢話を続けた。

「そうよ、景が買ってくれたの。三千万円もしたのよ。車一台買えちゃうじゃない。もったいなくて胸が痛いわ」

道村雪が林田景と付き合い始めてからというもの、同僚たちは皆そのことを知っており、今や羨望の眼差しを向けていた。

受付に選ばれるからには、しかも藤原グループの受付だ、容姿は誰もが秀麗だった。少なからず藤原グループの上層部と良い仲になろうと目論む者もいたが、道村雪のように、いきなり藤原...

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