第271章

岩崎奈緒はすぐさま前に進み出て、事務的な態度を崩さなかった。

「藤原社長、以前に元の設計図はご覧いただいているかと思いますが、最近施工の方で少し変更がございまして。この部分を修正しようかと考えております」

彼女の白く細い指先が、元々柱があった場所をトントンと叩く。萩原初の方を見ることなく、うつむいて真剣に自分の設計図を見つめている。

萩原初は、岩崎奈緒が現れた瞬間、目を細めた。

これが彩花の言っていたデザイナー?

確かにとても綺麗だ。少し釘を刺しておかなければ。

彼女は思わず藤原光司の腕に絡みつこうとしたが、そのタイミングで藤原光司が手を上げ、岩崎奈緒の図面を受け取った。

萩原...

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