第277章

藤原光司が彼女の前に差し出した手は、清潔で指が長く、爪も綺麗に整えられており、見ていて心地よいものだった。

しかしその美しさの下には、まるで潜んでいた野獣が指先で跳ねているかのような、冷たく、そしてどこか危険な気配が漂っていた。

岩崎奈緒は無意識に一歩後ずさったが、彼のもう片方の手が伸びてきて、彼女の背後にある壁につかれた。

進むことも退くこともできない。

岩崎奈緒は壁にぴったりと体を寄せたが、そうして二人の距離を引き離そうとしても全く意味はなかった。

彼の腕が前と後ろから、行く手を完全に塞いでしまっている。

彼女は緊張してごくりと唾を飲み込み、彼のことを見ることができなかった。...

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