第281章

岩崎奈緒に対してなら、藤原光司は彼女をただのおもちゃとして扱い、遊び飽きたら捨てただけだ、と強気に言い放つことができる。

しかし、萩原初を前にして、岩崎陽菜は絶対にそんなことは言えない。

受付の女性は、ほとんど無意識に岩崎陽菜の方を見た。この女は以前にも最上階の部屋を予約しに来たことがあり、今日もまた来て、どうしてもその部屋の客の情報を聞き出そうとしている。

最上階は藤原社長の部屋だ。長い廊下にスイートルームは二つしかなく、一つは藤原社長専用に内装を新たにした固定の部屋で、もう一つが客に開放されている。

誰でもその部屋を予約できるというのに、なぜ執拗に宿泊客の情報を尋ねるのだろうか。...

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