第284章

三人はすでに二階に来ており、岩崎奈緒を案内していた医師は傍らのソファを指差した。

「ユキの手術室はこちらです。こちらでお待ちいただけます」

そう言うと、医師は萩原初の方を向いた。

「萩原さん、猫ちゃんは二十分ほどで処置が終わります。萩原さんと、こちらの……」

医師は言葉に詰まった。萩原初はこれを好機と捉え、得意げに顎を上げた。

「彼氏です」

医師は微笑んだ。

「お二人は別の部屋のソファでお待ちいただけます。こちらへどうぞ。できるだけ早く済ませますので」

萩原初が彼氏と言った時、藤原光司は横目で岩崎奈緒を見ていた。

しかし、岩崎奈緒はただ心配そうにユキが手術を受けている部屋を...

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