第286章

契約書にサインした?

離婚するって?!

まだその条件を切り出してもいないのに、藤原光司の方からその話を口にするなんて。

萩原初は心が甘い気持ちで満たされ、体ごとふわりと浮かぶような感覚に陥った。

指先までが思わず震えだす。もし藤原光司が離婚したなら、藤原家に嫁ぐ可能性が最も高いのは、自分ではないだろうか?

「離婚……どれくらいかかるの?」

藤原光司は前方を見つめたまま、淡々とした口調で答える。

「遅くとも半年だ。この時期、祖父の体調が芳しくない」

萩原初は頬を赤らめ、猫を撫でながら必死に冷静さを保とうとした。

しかし、車が萩原家の前に停まると、彼女はこらえきれずに彼の方を振...

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