第290章

藤原光司は今日、まだ少し微熱があったが、体に出ていた赤い発疹はもう消えていた。

その表情は極めて冷たく、傍らに立つ道村雪は彼の返事を待っている。

しかし藤原光司は何も言わず、そのまま前へ進み、エレベーターに乗り込んだ。

道村雪は少々気まずそうに、慌てて自分の仕事場へと戻っていった。

一方、エレベーターの中では、井上進が藤原光司の頬がまだ熱で少し赤いのに気づき、急いで尋ねた。

「社長、やはりもう少しお戻りになって休まれた方が……」

藤原光司は一晩中熱を出していたため、今は少し眠たげに見える。彼は手を上げて眉間を揉み、とうとう堪えきれずに口を開いた。

「後でペニーから電話があったら...

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