第292章

「はい、おばさん。光司の会議が終わり次第、彼と一緒にそちらへ伺います」

電話を切ると、萩原初の目に得意げな色が浮かんだ。

一方、外に立っていた井上進は、彼女が携帯電話を操作するのを見ても止めなかった。何事もなければ、未来の社長奥様は確かに萩原初になる可能性が高い。

社長自身が気にしていないのだから、一介の秘書である自分がでしゃばって嫌われる必要もない。

萩原初はオフィスを出て、給湯室へと向かった。

道村雪はまだそこで真面目にコーヒーを淹れており、彼女が入ってくるのを見ると、その目には隠しきれない期待が宿っていた。

萩原初は彼女の前に立ち、給湯室に二人きりであることを確かめてから口...

ログインして続きを読む