第293章

岩崎奈緒はそのメッセージに返信せず、見ていないふりをした。

病院に着くと、昨日見かけた猫にまた遭遇した。今日は再診に来たのだろう。

ただ、今回は萩原初は付き添っておらず、昨夜の使用人が来ていた。

使用人の顔には五本の指の跡がくっきりと残っている。昨夜の萩原初の一撃が、どれほど強かったかが窺えた。

猫はケージに入れられており、使用人に掴み出され、獣医の診察に引き渡された。

獣医が猫を抱いて岩崎奈緒の前を通り過ぎる。岩崎奈緒も思わず感嘆した。この猫は確かに美しい。今まで見た中で最も綺麗なラグドールだ。

青い瞳は海のようで、毛量も豊かで、思わず撫でたくなる。

だが、これは萩原初の猫だ...

ログインして続きを読む