第295章

萩原初の視線が石川麻衣に向けられ、眉がわずかにひそめられた。

「ずいぶん長いこと座っているのに、お茶の一杯も出てこないなんて。山暁は今夜、お湯も沸かしてないのかしら?」

これは、石川麻衣という使用人の仕事ぶりに不手際があると非難しているのだ。

石川麻衣は無意識に藤原光司に視線を送った。藤原光司は萩原初に腕を組まれ、繰り返す発熱のせいで頬はやや青白いものの、その気品は損なわれていない。

彼が傍らに腰を下ろすと、萩原初もぴったりと寄り添うように座った。

石川麻衣は腹の虫が収まらなかったが、どうすることもできなかった。

キッチンに入り、お茶を淹れながら、こっそりと岩崎奈緒にメッセージを...

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