第296章

藤原の爺様がソファの前まで歩いて腰を下ろすと、石川麻衣が慌てて嬉しそうにお茶を一杯運んできた。

爺様はそれを受け取ると、ゆったりとした仕草で湯呑みを持ち上げ、蓋で茶葉の茎をよけている。

その声には、張りのある力が満ちていた。

「萩原さんとやらは、光司が結婚したことを知っておるのだろう。山暁はわしが奈緒に贈った新居だ。お主はしゃにむに追いかけてきて、こうして堂々と上がり込んでいるが、萩原家では礼儀廉恥というものを教わらなかったのかね?」

「お爺様、わたしは……」

「黙れ。わしをお爺様などと呼ぶな!」

藤原の爺様は手にした湯呑みを置き、鋭い視線で彼女をまっすぐに射抜いた。

「今すぐ...

ログインして続きを読む