第64章

外はまだ土砂降りの雨が降り続け、岩崎奈緒の声がこの静かな車内に鮮明に響いていた。

藤原光司の指先が止まり、目に奇妙な色が過った。

岩崎奈緒は彼の反応を気にも留めなかった。どうせあの褒め言葉は口先だけのものだったのだから。

彼女は目を閉じ、少し休もうとした時、車が揺れた。

彼女の頭は思わず彼の方へと傾き、二人の距離が一瞬で縮まった。

こんな大雨の日は路面が滑りやすく、渋滞も酷くなっていた。

三十分ほど動かなかった後、ようやく車が少しずつ動き始めた。

二人きりでの気まずさを避けるため、この三十分の間、岩崎奈緒は目を閉じて浅い眠りにつくことを選んだ。

最近睡眠の質が良くなかったうえ...

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