第73章

岩崎奈緒が部屋に入るなり、二十八歳ほどの女性がソファに座り、足を組んでテレビを見ているのが目に入った。叔母の吉原素素は台所で料理をしており、まるで年寄りに仕えているかのようだった。

ソファに座っていた女性は岩崎奈緒を見ると、口に含んでいたリンゴを置いた。

「おや、お城の姫様がお帰りか。家は汚いけど、適当に座りなよ」

林田東と吉原素素の顔には一瞬の戸惑いが浮かんだが、何も言い返せなかった。

吉原素素は岩崎奈緒の手を取り、彼女を見回しながら心配そうに尋ねた。「痩せたわね。お父さんはあの女に夢中で、あなたのことを疎かにしてるんじゃないの?」

「そりゃそうでしょ。あの子のお母さんが死んでど...

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