第78章

岩崎奈緒はその日、正午まで眠り続けた。目を覚ますと頭が激しく痛み、携帯が猛烈に振動していた。彼女は慌てて通話ボタンを押した。

叔母の吉原素素からの電話で、声には焦りが滲んでいた。

「奈緒、何度か電話したのに出なかったから、何かあったんじゃないかって心配したのよ。もう少しで叔父さんに見に行かせるところだったわ」

岩崎奈緒は不在着信を確認すると、叔母から五件もかかっていた。心配されるのも無理はない。

「大丈夫よ。昨夜遅くまで起きてて、疲れてたから気づかなかっただけ」

吉原素素はほっと息をついた。「じゃあ、今日はお母さんのお墓参りに行くの?」

「うん、もう起きて支度してるところ。これか...

ログインして続きを読む